心理社会グループ

はじめに

心理社会グループは、心理・社会的な視点からのアセスメントや介入を用いた研究及び臨床実践を行っており、それぞれが独自のテーマに取り組んでいます。現在、大きく分けて下記のテーマが取り扱われています。

認知行動療法・対人関係療法

認知行動療法は、うつ病の他にも、社交不安障害、強迫性障害、パニック障害、PTSDなどに効果があることが知られていますが、最近では統合失調症やそのリスク状態であるAt-Risk Mental State(ARMS)にも適用が試みられ、その有効性が示されています。認知行動療法は、現在、国際的に最も普及している心理学的治療法のひとつで、わが国においても、2010年からうつ病での診療報酬による保険点数化が開始されるなど、その普及への期待は高まり社会的にも大きな関心が寄せられています。

一方で、わが国においては認知行動療法の教育システムは十分に確立されておらず、平均的な技術水準は国際レベルに達しているとはいえません。また、一般的な臨床現場では適切な認知行動療法が十分に普及していないという現状もあります。この問題の要因としては、欧米圏で開発された心理学的治療法の適用が難しいという点を挙げる立場もある一方で、わが国では認知行動療法を含め、心理学的治療法についての教育システムが十分に普及、確立していないという課題があるといえるでしょう。また、心理学的治療法の効果を実証的に検証するという考え方がわが国では未だ十分には浸透しておらず、医療資源を投資させるための根拠作りがおろそかになってきたという経緯もあるように思えます。今後のわが国の精神医学においては、心理学的治療についても新しいエビデンスを生み出すための研究を推進すると同時に、エビデンスを実際の臨床に適用していくための方法論を確立し、社会に普及させていくための努力が必要とされていると考えられます。

そこで、本グループでは、認知行動療法の技術水準の向上を図ることを目的に、実践を通した教育システムを確立していくことと、認知行動療法の普及と技術水準の向上を図ることを目標に掲げております。昨年度は、認知行動療法センター・みやぎ心のケアセンターの協力を得て『心理支援スキルアップ講座』を開催し、外部の専門家を招聘したワークショップを10回以上開催いたしました。また、現在はスーパービジョン体制の確立を目指し、録音テープを用いたスーパービジョンを開始しており、治療遵守度を評価するマニュアルの活用も始めています。同時に、宮城県内の臨床心理士や精神科医に対しても認知行動療法の普及を図るための活動を継続して行っております。

研究活動としては、国内の多施設共同研究としてARMSの認知行動療法のオープントライアルをわが国で初めて実施しており、平成25年度から事例の受け入れを開始しています。また、早期段階の統合失調症の認知行動療法を実践し、有効な治療対象者や適用方法のありかたについて質的な調査を行っているところです。その他、早期精神病における認知的洞察や自己や他者に対するスキーマについての調査を行い、精神病性障害における認知心理学的な研究も進めています。予防精神医学寄附講座においては、一般市民向けのCBT講座を認知行動療法センターと共同で実践したり、認知行動療法と関連が深い復興期の心理支援方法であるSkills for Psychological Recovery(SPR)の普及についての活動も行っております。

臨床実践においては、うつ病、早期精神病、ARMS、社交不安障害、強迫性障害、パニック障害、PTSDなどを対象とした認知行動療法を行っておりますが、教育と研究を目的としているために受け入れ数には制限を設けさせていただいております。そのため、原則的に外部からの受け入れは行ってはおりません。現在のところは研究による基準を満たす症例や、治療を受け入れる可能な枠数の中で、大学病院精神科で治療中の患者の一部を対象とした治療を行っております。

今後も、わが国においてエビデンスに基づいた適切な心理学的治療を、実際の患者に役立つ形で提供する体制作りを図るための研究と臨床実践を重ねていきたいと考えております。

(2013.7.8改訂)

産業医学精神医学

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は、厚生労働省の労働者健康状況調査によると約6割とされています。心の健康問題により休職している労働者の数の増加から労働力の損失が注目され、職域においてメンタルヘルスを保つ重要性がはっきりしてきました。

本グループでは、仕事・家庭間のストレスとうつ症状とがどのような関連をもつかという調査や、東日本大震災に関連しては、災害時に職場で求められるメンタルヘルス対策について、震災時の状況を踏まえ検討を行っております。また、職域のメンタルヘルス対策の必要性についての啓発活動も行っております。

(2013.7.8改訂)

デイケア部門

平成17年10月、当院デイケアが開設されました。デイケアでは様々なプログラムに集団で取り組み、生活リズムを整えたり、対人関係の訓練を行ったりしながら、メンバーが個々の目標を達成するためのサポートをします。

当デイケアの特徴は、デイケアルームが精神科病棟内に位置するという点で、それにより入院急性期治療から社会復帰までの一貫した治療を院内で提供することが可能です。また、小規模デイケア(定員14名)であることから、家庭的な雰囲気で、スタッフがよりきめ細やかで臨機応変な対応を行うことができます。利用期間は6ヶ月単位での更新 (状況により最長2年までの延長可能)となっており、漫然とした通所が防がれ、目的意識の明確化が図られています。

プログラムは、生活技能の向上、対人能力向上、本人・家族への心理教育の3つを中核として構成されています。小規模の集団の中で多様化するメンバーの疾患・ニーズに応えるべく柔軟な対応を行っており、最近では運動や調理などのより活動的なプログラムを通した治療の場の形成が試みられています。

学会発表タイトル

  1. 日本デイケア学会 第11回年次大会 in 熊本 (2006年9月)
    1. 大学病院におけるデイケア立ち上げの経験から考える今後の課題1
      〜 病棟勤務からデイケアに移って見えてきたもの 〜
    2. 大学病院におけるデイケア立ち上げの経験から考える今後の課題2
      〜 スタッフ間におけるデイケアの捉え方とアセスメントの共有 〜
  2. 日本デイケア学会 第12回年次大会 in 札幌 (2007年9月)
    開設2年 SSTプログラムの取り組み
    〜メンバーの生活に合う練習課題を行なえるようになるまで〜

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