神経精神薬理グループ

はじめに

本グループでは、未だ症候学にとどまっている現代精神医学を、本来の原因の探求とそれに基づいた実践的な治療を目指して、精神疾患に対する診断と治療を再構築していくことを目標としています。現在、本グループでは分子イメージングを用いた新規向精神薬の脳内動態と臨床症状の関連性についての研究、薬物治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の治療効果や副作用の発現に関わる遺伝子解析などの研究と、臨床現場での合理的な薬物療法ガイドラインの確立と実践、臨床精神薬理学専門医(日本臨床精神神経薬理学会)の養成をおこなっています。

分子イメージングを用いた研究

 分子イメージングとは、これまで静的、定性的にしか判断できなかった薬の生体内での動態を、「分子レベル」で可視化することにより、動的・定量的に捉えることを可能とするもので、生体機能や病因の解明研究、創薬研究などにおいて注目されています。分子イメージングにはポジトロン断層法(Positron Emission Tomography : PET)、核磁気共鳴機能画像(functional Magnetic Resonance Imaging : fMRI)、光学イメージング (Optical Imaging)などの手法がありますが、PETによる臨床研究をおこなえる施設は国内では数施設に限られています。本グループでは、東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野と共同で、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター Cyclotron and Radioisotope Center (CYRIC), Tohoku University (http://www.cyric.tohoku.ac.jp/index_j.html) でのPET臨床研究をおこなっています。

治療抵抗性統合失調症に対する研究

我が国でも、2009年に薬物治療抵抗性統合失調症に対する国際的標準薬であるクロザピンが認可されましたが、無顆粒球症などの致死的な副作用があるために頻繁に血液モニタリングするなど厳密な運用の元でしか使用できません。また、そのクロザピンを用いても薬物治療抵抗性の患者さんの約3分の1の方には十分な治療効果が得られないなど、クロザピンの副作用出現のスクリーニング法の開発や治療奏功のメカニズム、クロザピンも無効な治療抵抗性統合失調症の病態解明・治療法の確立などが必要です。
 本グループでは、全国の医療機関と協力して、患者さんから採取した血液ゲノムの遺伝子多型解析を行い、さらにリンパ球の遺伝子発現をマイクロアレイ法で網羅的に解析し、これらのデータをもとにクロザピンの治療反応性や無顆粒球症などの重大な副作用に関わる遺伝子の解析を行っています。

学会・論文発表

主に日本臨床精神薬理学会、日本精神薬理学会、日本生物学的精神医学会を中心に研究成果を多数発表しています。

  • Sato H, Ito C, Tashiro M, Hiraoka K, Shibuya K, Funaki Y, Iwata R, Matsuoka H, Yanai K: Histamine H1 receptor occupancy by the new-generation antidepressants fluvoxamine and mirtazapine: a positron emission tomography study in healthy volunteers. Psychopharmacology, 2013, DOI 10.1007/s00213-013-3146-1(Epub ahead of print)
  • Shiyuya K, Funaki Y, Hiraoka K, Yoshikawa T, Naganuma F, Miyake M, Watanuki S, Sato H, Tashiro M, Yanai K: [11C]Doxepin binding to histamine H1 receptors in living human brain: reproducibility during attentive waking and circadian rhythm. Frontiers in Systems Neuroscience, 2012;6:45. DOI: 10.3389/fnsys.2012.00045. Epub 2012 Jun 11.
  • Komatsu H, Ohara A, Sasaki K, Abe H, Hattori H, Hall FS, Uhl GR, Sora I.: Decresed response to social defeat stress in µ-opioid-receptor knockout mice. Pharmacol Biochem Behav. 99(4); 676-82, 2011
  • Saito A, Fujikura-Ouchi Y, Ito C, Matusoka H, Akiyama K: An association study on polymorphisms in the PEA15, ENTPD4 and GAS2L1 genes and schizophrenia. Psychiatry Research. 185; 9-15, 2011
  • Ito C: Histamine H3 inverse agonists as novel antipsychotics. Central Nervous System Agents 9(2): 132-136, 2009
  • 伊藤千裕、佐藤博俊: 精神疾患におけるヒスタミンH1受容体のPETイメージング、精神科、21(5) : pp590-594, 2012
  • 伊藤千裕: 結節乳頭核、ストレス科学辞典(パブリックヘルスリサーチセンター編)、pp.257、実務教育出版、2011
  • 佐藤博俊、松岡洋夫: 服薬自己調整が続く患者へRLAIを使用し、デイケアへの通所が可能となった1例. リスペリドン持効性注射薬(RLAI)100の報告. p.100-101. 星和書店. 2010
  • Histamine H1 receptor occupancy of new generation antidepressant: in vivo positron-emission tomography study. JSPS-NRF Asia Science Seminar 2011. Seoul, Korea (2012.2) (Poster Investigator Award)
  • Decreased psychosocial stress response in mu opioid receptor knockout mice. The 1st International Conference of Tohoku Neuroscience GCOE. Zao, Japan (2008.1)
  • PETによる新規抗うつ薬(NaSSA・SSRI)のヒト脳内H1受容体占拠率の解析. 第21回日本臨床精神薬理学会・第41回日本精神薬理学会 合同年会, 東京(2011.11)
  • 向精神薬とヒスタミン. 第14回日本ヒスタミン学会, 川崎(2010.10) (第14回日本ヒスタミン学科学術優秀賞 受賞)
  • 気分調整薬がヒト神経由来細胞およびグリア由来細胞の各BDNF転写物バリアント発現量に及ぼす影響の検討. 第30回日本生物学的精神医学会, 富山(2008.9)

    など

(2013.7.30改訂)

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